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モルモットってどんな動物?専門獣医師が解説する知らないといけない生態と特徴〔Ver.5〕

 2019/03/17 1 モルモットの生態と特徴 この記事は約 10 分で読めます。 37,375 Views

まるで宇宙人!可愛い奴!

モルモットはネズミの仲間のげっ歯類ですが、ハムスターやリスとは異なり、かなり多くの特徴があります。カピバラやチンチラなどと一緒に南米で独自の進化を遂げたげっ歯類です。その特徴は他の哺乳類にもないものが多く、宇宙人のような特殊な動物です。

分類と生態

モルモットは南米に生息するテンジクネズミ(パンパステンジクネズミ、ペルーテンジクネズミなど)を家畜化した動物で、野生にはいません。

  パンパステンジクネズミ

古代インディオたちが食用として飼育したのが始まりで、中世のインカ帝国の時代にはヨーロッパに伝わり、主にペットとして飼育されてきました。

モルモット食糧

食用モルモットの詳しい解説はコチラ!

Guinea pig(ギニアピッグ)を日本でモルモットと呼ぶ理由は、19世紀にオランダの商人によって長崎に持ち込まれてマルモットと呼んでいたこと、またリスの仲間のマーモット(Marmot)に似ているために、間違えてつけられた等の諸説があります。

マーモット  

モルモットは体の生理機能が人に似ている点が多いこと、容易に繁殖しやすいこと、性格が温和であることなどの理由から実験動物として数多く飼育されています。優しい性格で、かむことが少ないために、情操教育の目的のために、学校飼育動物やふれあい動物園などで、子供たちとたわむれる優しい動物です。

モルモット学校飼育   モルモットふれあい

モルモットの実験動物に使わる理由の詳しい解説はコチラ!

分類

ネズミ目(げっ歯目)テンジクネズミ科テンジクネズミ属
学名Cavia porcellus
英名:Guinea pig(オスはboar、メスはsow)、Cavy
別名:テンジクネズミ、ケイビー

分布

ペルー南部、ボリビア南部、アルゼンチン北部、チリ北部

身体

頭胴長:20~40cm
体重:0.5~1.5kg(一般的にメスよりもオスのほうが大きいです)

生態(テンジクネズミ)

環境:アンデスのような山岳地帯や乾燥した高地で、乾燥した地域です。

行動:夜行性で昼は巣の中で休み、夕方頃から活動を始めます。5~10頭の群れで暮らしています。

食性:草食性で、植物の葉、茎、根、実や種子などを食べています。
寿命:6~8年

性格・習性

温和で臆病

温和な性格で、臆病で繊細な面もあります。しかし、実際は感受性が豊かで、実際は行動的で、鳴き声や仕草で意思表示をします。

臆病以上に神経質な面も持っていますので、危険を感じるとすぐに小屋やトンネルに隠れてしまいます。

モルモット

群れるの大好き

モルモットは自然界では天敵に食べられる(捕食される)立場であるため(被捕食動物)、群れで生活をしています。

モルモット
 

野生でも複数で生活することは数の安全を求めています。より多くの目が捕食者の存在を彼らに警告するのを助けるからです。そのため、モルモットは休憩中や食事中に、立ったり横になったりしている行動ががよく見られます。常に外敵に食べられないように警戒心が強く、物陰に隠れることが多いです。

 

コミュニケーション

仲間同士で仕草と鳴き声で積極的にコミュニケーションをとります。複数でモルモットを飼うと、お互いに顔や鼻を近づけ、匂いをかぎ合うような仕草の時は挨拶です。

モルモットキス

鳴き声

沢山の種類の鳴き声があり、プイプイ(何かの要求や空腹時)、キュルキュル(甘え)、 キーキーやキュイキュイ(興奮や怒り)、グルグル(不機嫌)、クルルルル(上機嫌)などの声を使い分けています。

愛情深い

好奇心が旺盛で、人懐っこい一面も持っています。飼い主に馴れてくると、自分から甘えてきたりスキンシップを求めてくるようになります。抱っこしたり撫でてあげるなど、愛情表現をたっぷりしてあげると喜びます。

モルモット 

ポップコーンジャンプ

モルモットはポップコーンジャンプと呼ばれる特有の跳躍をします。特に若いモルモットに見られ、興奮時に前足と後足を一緒に上下に軽く飛び跳ねるようなジャンプです。ただし通常は、立ち上がって肩の高さ程度の壁があれば跳び越えることはできません。

食糞

モルモットはウサギ以上に食糞をします。

食糞の詳しい解説はコチラ!

これがポイント!(分類・生態 ・習性)
・南米で独自の進化を遂げたげっ歯類
・テンジクネズミを家畜化したのがモルモット
・モルモットは古代インディオの食料でした
・群れで生活をしている
・夜行性
・草食動物
・温和で臆病な性格
・人懐っこい面もある

特徴

三頭身

三頭身で、頭は体と比べて大きくて丸みを帯びています。体は寸胴で短く、足も短くてドラム缶のようです。

モルモット

短かすぎる尾

外観上は尾が無いように見えますが、短い尾の骨があります。

指の数

指の数は前肢は4本、後肢は3本です。

モルモット前足   モルモット後足

常生歯

歯は前歯と奥歯があり、全部で20本です。前歯も奥歯も常生歯で、生涯にわたり伸び続けます。そして、上の奥歯は外側に、下の奥歯は内側に傾いている特徴的な歯列をしています〔Slade et al.1969〕。

モルモット前歯  モルモット奥歯

臭腺

臀部と会陰部には皮脂腺が密に存在し、この分泌液は皮膚や毛の表面をコーティングして保湿の役割をしています。分泌液には独特の臭いがあり、モルモットがくさいといわれる一因になっています。オスはお尻の上にある臭腺が目立ち、マーキングや個体識別のために使われています。発情期になると臭腺からの分泌液が増えて、茶褐色の脂っぽいベタベタしたもので汚れ、独特の嫌な臭いを発します。

モルモット臭腺  モルモット臭腺

モルモットの臭腺の詳しい解説はコチラ!

乳頭

乳頭は雌雄ともに後足の付け根に、1対(2個)しかありません。

モルモット乳首

ビタミンC合成能力

体内でビタミンCを合成できないために、エサから補わないといけないです。体内でビタミンCを合成するL-グロノラクトンオキシダーゼという酵素を欠乏しているためです〔Guide for the Care and Use of laboratory Animal 1985〕。ビタミンCはストレスがかかったり、病気になると大量に消費されるために、通常よりも多く与えないといけません。ビタミンC欠乏症に注意しなければいけません。

モルモットのビタミンC欠乏症の詳しい解説はコチラ!

胃腸

胃は深い袋状の形をしており、食道とつながる噴門部(入口)と十二指腸とつながる幽門部(出口)が接近していて、それぞれの直径が細いのが特徴です。このような胃の形のために、モルモットは吐くことができません。モルモットの消化器で最も特徴を持つのが盲腸で、腹腔の大半を占めるほど大きいです。盲腸は半円形で、外側に多数の嚢があり、発酵・消化が行われます〔Parra 1978〕。微生物によるビタミン B 群や必須アミノ酸の合成、食糞のための柔らかい盲腸便を作ります〔Hunt et al.1974〕。ビタミンB群やビタミンKは盲腸便に含まれて、それらを食糞で摂取します。

抗生物質に弱い

盲腸にはたくさんの腸内細菌が共存し、繊維の細胞壁を壊し、消化吸収を行う発酵タンクとしての重要な役割をしています。モルモットは薬に対して敏感で、特に抗生物質の内服投与により腸内細菌叢が崩れ、悪玉菌のクロストリジウムが増殖します。その結果、悪玉菌が増えて腸炎を起こし、下痢や食欲不振が起こります(抗生物質性腸疾患(抗生物質関連性腸炎))。悪玉菌が毒素を出して、全身状態が悪化して死亡するようなこともありますので注意して下さい。

モルモットに抗生物質を与える時は、乳酸菌などの善玉菌も一緒に与えて腸炎を予防して下さい。モルモット専用の乳酸菌はありませんが、胃酸で失活しないような生菌(プロバイオテックス)が理想です。モルモットに使える生菌剤の商品は以下の2つになります。プレバイオテックスも併用するとよいでしょう。普段からモルモットの腸活に役立てたい場合、現在動物病院からお薬を処方されている場合は、ぜひお求めになって下さい。

プロバイオテックス

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プレバイオテックス

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排泄物

体の大きさに似合わず、大量の糞やオシッコの量が多いです。

モルモット排泄物

カルシウム尿

尿色は透明~やや黄色で、炭酸カルシウムやリン酸カルシウムの結晶が多く含まれています(カルシウム尿)。カルシウムが多いとやや白濁して見えます。したがって、モルモットではカルシウム系の尿結石ができやすいです。

 

これがポイント!(身体の特徴)
・寸胴で三頭身、頭部が大きい
・尾が見えない
・後肢の指は3本
・切歯も臼歯も伸び続ける常生歯
・吐くことができない
・抗生物質の内服で下痢を起こしやすい
・糞や尿の量が多い
・ビタミンCが体で合成できない
・カルシウム尿

文献
■Carpenter JW,Mashima TY,Rupiper DJ eds.Exotic Animal Formulary 2nd ed.WB Saunders.Philadelphia.1996
■Guide for the Care and Use of laboratory Animal.U.S.Department of health,Education and Welfare.Public Health Service.NIH.1985
■Hunt CE,Harrington.DD.Nutrition and nutritional diseases of the rabbit. In The Biology of the Laboratory Rabbit.Academic Press. New York.1974
■Kaiser S,Kruger C,Sachser N.The guinea pig.In The UFAW Handbook on the Care &amp:Managment of Laboratory Animals 6th ed. Poole TB ed.Longman Scientific &amp:Technical.UK.p380-398.1986
■Parra R.Comparison of foregut and hindgut fermentation in herbivores.In The ecology of arboreal folivores.Montgomery GG ed.Smithsonian Institution Press.Washington DC. p205–229.1978
■Slade LM,Hintz HF.Comparison of digestion in horses, ponies, rabbits and guinea pigs.Journal of Animal Science 28.842-843.1969

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