専門獣医師が解説するイグアナの雌雄鑑別と繁殖〔Ver.2〕卵を産みすぎで困っちゃう!
雌雄鑑別
成体になると体の色が変わり、雌雄でそれぞれ特徴が出てきます(二次性徴)。また、発情したオスは攻撃的になるため、この発情の行動の変化でも判断できます。
- 体の大きさ
- 体の色(カラー)
- 鼓膜下大型鱗
- 後頭部のコブ
- デューラップ
- 大腿腺
- クロアカサックの膨らみ
- オスの発情行動
体の大きさ
オスはメスと比べて身体がやや大きくなります。しかし、成長速度は個体差があるので、その違いはあまり分かりません。
体の色
オスは体色がオレンジ色を帯びることが多いです。
メスは緑色のままか、多くは暗褐色になります。
鼓膜下大型鱗
オスは顔面側部の鼓膜下大型鱗がメスよりも大きく、その下の部分が膨むますので、正面から見るとおたふくのようです。
メスはオスと比べて膨らみが乏しいです。
後頭部のコブ
オスは後頭部が瘤のように2つの膨らみが見られることもあります。
デューラップ
オスのデューラップはメスよりも大きくなります。
大腿腺
オスは大腿腺(だいたいせん)が発達し、蝋状の分泌物が蓄積して、テリトリー内の物やメスに擦りつけてマーキングを行います。
メスは大腿腺が小さいか、ほとんど見られません。これが雌雄鑑別で一番有用な鑑別点です。
クロアカサックの膨らみ
オスの尾の基部にはヘミペニスが収納されているクロアカサックがあるため、2つの膨らみが確認できることもあります。しかし、イグアナでは膨らみが僅かでほとんど分からないです。
繁殖
イグアナを繁殖させたら、引き取り手がいるのか、自分で育てることができるのかよく考えてください。イグアナは大きくなるので、複数で飼育するにはそれなりんの手間と労力が必要になります。
性成熟
オスメスともに頭胴長224~295mm〔Cole 1966〕、あるいは1.5~3年〔Rodda 2003〕で、性成熟を迎えて発情します。オスは精子ができるようになり、メスは卵を産むことができるようになります。豊富な栄養のあるエサで飼育されたイグアナでは翌年に性成に達することも珍しくありません〔Rodda 2003〕。
繁殖期
イグアナは季節繁殖動物で、繁殖する季節が決まっています。野生では乾季に雨季に孵化する季節繁殖動物です。基本的に年1回の繁殖が行われ、北半球の棲息地域では12月から翌1月に発情期を迎えて交配し、交配後2ヵ月以上を要して産卵し、翌年の3月から6月に孵化する繁殖周期です〔Rodda 2003〕。日本で飼育されているイグアナは秋~初冬に発情します。成熟したメスはオスの存在の有無に関わらず産卵し、1回の産卵数は70個にも及ぶことがある(Rodda, 2003)。イグアナの卵は楕円形をしており、卵の大きさは約26×38mmです。卵の数は身体が大きいメスであれば数が多くなります、卵の大きさは、身体の大きさと必ずしも相関関係があるとは限りません〔Rodda 2003〕。
オスの発情行動
発情したオスは攻撃的になります。体を膨らませ、脚を踏ん張って体を持ち上げてより大きくみせ、相手に対して尾をたたきつけるようなこともします。怒ると口を開け威嚇して、縄張り内に入ってきた何者に対してもかみつくようになります。特にオス同士は激しい喧嘩をするので注意して下さい。発情したイグアナは生理の人間の女性飼育者を攻撃することが報告され、性的誘因の原因とされています。
発情したオスは精液の乾燥した塊が総排泄孔に付着していることもあります。
発情したオスの攻撃的な行動は求愛でもあり、メスを求めての性的行動でもあります。この時期のオスは触ることもできず、ましてや離れていても攻撃することもあるため、飼育者はケージの中に閉じ込めたままにするしかないです。オスのイグアナにマスターベーションのために、人の腕を貸したり、性欲処理目的の人形(イグアナフィギュア)をオスの個体の相手にさせたりしています。
メスの発情行動
成熟したメスはオスがいなくても無精卵を産みます。多数の卵胞が発育するので、お腹が膨らんで、食欲が落ちることから、病気(卵関連疾患)と間違いやすいです。
卵胞が大きくなっても、環境が卵を産むのに適していないと、排卵して卵になる前に吸収するような現象が起こることがあります(卵胞吸収)。
交配
交尾はメスの背中にオスが乗って行われます。
2本あるヘミペニスの1本のみをメスの総排泄孔に挿入し、精液を注入します。
精子はメスの体内に数年蓄えられ、時間差を生じて有精卵を産むこともあります(遅延受精)〔Rodda 2003〕。
抱卵
交配後約2ヵ月で産卵します〔Rodda 2003〕。卵を持ったメスは腹部膨満になり、消化管が圧迫され、産卵前の4~6週は拒食しますが、それは正常な行動です。産卵までの間は、水分だけは頻繁に摂取するので、新鮮な水だけは用意しておいて下さい。性成熟したメスは交配もせずに、1頭で飼育していても無精卵を産みます。メスは産卵に適した環境を求めて非常に広い範囲を移動し、産卵適所を見つけると地面に深い穴を掘る行動をします。
産卵床
卵をもったメスは、野生では1m近く地面に穴を掘り、その中で産卵します。掘る行動が産卵の引き金になっていると思われるので、飼育下でも掘れる場所(産卵床)を提供する必要があります。飼育下では、適切な産卵場所を設けないことが難産を招くといわれており、卵を持ったイグアナに徘徊できる広い部屋と産卵床を用意します。
大型の衣装ケースなどに土を入れ、周りをダンボールなどで囲って暗くするとよいでしょう。土を食べることもあるので、肥料などが混入されていない普通の黒土が理想です。周囲の囲いには出入り口を設け、イグアナが自由に出入りできるようにして下さい。内部は保温し、適度な湿度があった方がよいので、段ボールの下にフィルムヒーターなどを敷き、定期的にスプレーなどで水をまきます。最大70個/回の卵を産みます〔Rodda 2003〕。
イグアナの卵は生まれたてはらかく、鶏のような硬い卵殻がありませんので、しぼんで見えます。周囲の水分を吸収してするような構造をしています。
孵化
産卵したグリーンイグアをケージに返したら、卵を慎重に掘り返して孵化をさせます。爬虫類の卵は胚が出来るまで(約1日?)は転がっても問題ありませんが、胚が形成された後に転がって上下逆にすると卵が死にます。基本的に卵は見つけた時の向きのまま保管するために、マジックなどで上部に印を付けます。イグアナの卵の孵化には73~80日かかります。温度は29.4℃で、湿度は85%を保つように環境を設けて下さい。孵卵用床敷は、バーミキュライト、ミズゴケ、ピートモスなどが使われます。最近ではハッチライトと言う孵化専用の床材も販売されています。容器は衣装ケースやプラケースなどがよく使われます。乾燥を防ぐために、蓋はしておきますが、代わりにラップなどを使用します。通気性をもたるために、ラップの蓋に針でいくつか穴を空けて下さい。
市販の鳥類用の孵化器を使うのもよいです。転卵(回転する)機能がオフに出来る物を選びます。
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検卵
産卵2~3日で卵の中に血管が発生します。卵は薄い殻に覆われているので暗い場所で下から懐中電灯等で照らせば血管の確認ができて、有精卵と判断できます。卵に光をあてることをキャンドリング(Candling)といいます。無精卵の場合は、産卵誤1~2週間で潰れてしぼんできます。出生直後のイグアナにはヨークサック(Yolk sack)と呼ばれる栄養の袋が腹部にぶら下がっています。動き出した幼体のヨークサックを切らないようにし、新たなゲージを用意して移します。ヨークサックからの栄養をとるので、すぐには餌を食べません。ヨークサックから栄養を取り終えた幼体は初回の脱皮を数日以内にします。これはファーストシェードといわれ、餌を与える目安になります。
表:繁殖知識
繁殖形式 | 卵生 |
性成熟 | 頭胴長 22.4-29.5cm〔Cole 1966〕 1.5-3年〔Rodda 2003〕 |
発情期 | 季節繁殖(北半球) 発情 12-翌1月 産卵 交配後約2ヵ月〔Rodda 2003〕 |
産卵 | 1回/年 最大70個/回〔Rodda 2003〕 |
性決定 | 遺伝的性決定 |
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