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専門獣医師が解説するモルモットの飼育〔Ver.5〕

 2019/03/16 2 モルモットの飼育 この記事は約 14 分で読めます。 16,658 Views

モル飼育はストレス対策!

モルモットはストレスを受けやすい動物なので、飼育にはどうストレスを少なくするかがポイントになります。

モルモット

飼育

夜行性ですが、ペットのモルモットは人間の生活に合わせられます。臆病な性格で、さらに聴覚が発達しているために、静かでストレスの少ない環境で飼うことが理想です。物音や気配で目を覚ますために、ケージを置く場所は、静かな部屋にしてあげましょう。モルモットは環境に敏感な動物なので、環境が悪いとストレスになり、食欲不振、軟便・下痢、体重減少などが見られることも珍しくないです。

飼育頭数

群れで暮らして社会的なコミュニケーションをとることを好むため、複数飼育が薦められています。

モルモット

集団の中で優劣が認められると、相手の毛や耳をかじったりすることもありますので注意して下さい。

モルモット咬傷

オスとメスを一緒にすると繁殖をしますので注意して下さい。オス同士は喧嘩が起こりやすいです。理想はメス同志がよいでしょう。もしオスとメスを飼育し、繁殖させたくない場合は、ケージを隣合わせにして鳴き声を聞かせてあげましょう。スイスの法律ではモルモットの単独飼育は禁止されています。群れで生活している動物を、一頭で飼うことは虐待という見解のためです。

モルモット

ケージ

モルモットはあまり飛び跳ねないので、蓋のない水槽タイプや金網タイプのケージで飼育できます。ケージの中にエサ入れや給水器、小屋などをレイアウトして設置します。

モルモットケージ

表:ケージの中に設置するグッツ

グッツ 必要度
小屋
エサ入れ
給水器
トンネル
かじり木

環境の変化や騒音などは、過大なストレスを与えるため十分に注意して下さい。

モルモット小屋

近年では、ケージの大きさに様々な考慮がなされ、さらに広い床面積が推奨されています。

表:実験用モルモットのケージの大きさ〔(EUの実験動物保護指令〕

体重 床面積(cm2) 高さ(cm)
200g以下 200

23

 

200-300g 350
300-450g 500
450-700g 700
700g以上 900

立ち上がった時に肩の高さより高い壁を乗り越えることはできませんので、ある程度の高さがあれば天井がなくても飼育できます。

 モルモットケージ

小屋

臆病な性格のため、自分一人で落ち着ける場所が必要なので、中で動けるくらい余裕がある小屋を1つ用意しておくとよいでしょう。

モルモット

トイレ

基本的にモルモットはトイレを覚えないです。糞やオシッコは床のあちこちでするので、トイレよりも床敷を取り換えやすい物にすることを考えましょう。

モルモット糞

床敷

床敷は牧草が理想ですが、大量の糞や尿のために不衛生になりやすいです。そのため、糞や尿が下に落ちる金網の床も勧められていますが、金網の床は、足をを引っかけることによる外傷や骨折の恐れがあります。
モルモット牧草床敷 モルモット金網の床

床板が硬い、運動不足、肥満などの原因で潰瘍性足底皮膚炎が多発します。

床敷として孔の開いたプラスチック製の床板(フットレスト床板)が使われることが多いです。足裏にも優しく、多孔なために四肢の負荷が減り、糞やオシッコが下のスノコに落ちるため衛生的で、潰瘍性足底皮膚炎の予防になります。

モルモットケージ

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温度・湿度・照明

温度

モルモットは暑さよりも寒さに強い動物です。夏はケージを直射日光が当たる所や閉めきった部屋に置くと、熱中症になる可能性があります。部屋の温度を観察し、涼しい場所に置いてあげて下さい。それでも暑い場合は、冷房や送風などで温度を調節しましょう(温度・湿度)。冬はエアコンやヒーターなどで保温をします(温度・湿度)。特に幼体や毛が無いスキニーギニアピッグは低温に弱いので、肺炎にならないように注意して下さい。

湿度

モルモットは体の割には糞とオシッコの量が多く、掃除を怠ると湿気が高くなり、臭いもこもります。

照明

夜行性の動物なので、日光浴をさせる必要はありません。

表:温度・湿度〔Kaiser et al.1986〕

温度 18-24℃
湿度 50-60%
これがポイント!(環境)
・群れで飼うとモルモットは安心する
・スイスではモルモットは一頭で飼ってはいけない法律がある
・静かな場所で飼う
・ケージの蓋は要らない
・フットレスト床板
・トイレは覚えない

食事

モルモットは草食動物で、基本的に植物質の餌を食べています。最も重要な栄養素である繊維質は腸内細菌によって発酵・消化され、盲腸で揮発性脂肪酸(VFA)となり、それがエネルギー源になります〔Henning et al.1970〕。基本的に牧草を主食にし、その他モルモット用ペレット野菜を与えて下さい。

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モルモットは餌容器に身体を入れる習性があり、餌容器はケージに固定できるものか、陶製の器で重たいものを使いましょう。

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活動し始める夕方から夜の早い時間にかけて、給餌して下さい。牧草やペレットは常に餌容器に入れておき、しおれやすい野菜は時間を決めて新鮮なものを与えます。

 

モルモットは餌の内容に敏感ですので、急な変更で拒食を示すことがあります。餌を変更する場合は数日以上の時間をかけて行って下さい。果物やおやつなどはコミュニケーションの一環として、時々与える程度にとどめましょう。粗繊維が少なく、糖質や澱粉が多いおやつや果物などのエサを多く与えると、腸炎消化管のうっ滞が好発します。

栄養

モルモットの栄養学の詳細は分かっていません。粗繊維15%、粗タンパク18%、粗脂肪1.33~4.00%が理想と言われています〔Nutrient Requirements of the Guinea Pig 1995〕。粗繊維は15%が必要とされていますが、最低10%〔Cheeke 1987〕や9~18%〔田嶋 1970〕など、その見解は幅があります。妊娠あるいは授乳期には18~20%の粗タンパクが理想とされています〔Lister et al. 1965,Shelton 1971〕。なお、モルモットは脂肪肝になりやすいこと、ビタミンCがエサから摂取しなければならない特徴があります。

モルモットの脂肪肝の詳しい解説はコチラ!

ビタミンC

モルモットは身体でビタミンC(アスコルビン酸)の合成を行うことができないため、エサから補給しなければなりません。必要量は15~20mg/㎏/日で、妊娠中や授乳中のメスは30mg/kg/日以上です〔Guide for the Care and Use of laboratory Animal 1985〕。ビタミンCは皮膚、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成するコラーゲンの生成に関係するため〔Udenfriend 1966,Rivers et al. 1970〕、欠乏すると皮膚、血管、骨、関節に異常が現れ、食欲不振、軟便・下痢、皮膚炎ならびに被毛粗剛、歯肉炎、出血傾向、歩行障害(肋軟骨接合部の拡大や長骨の骨端成障害)が起こります〔Green et al.1980〕。ビタミンCは炎症反応や免疫にも大きく関与し、欠乏すると白血球の走化性不全〔Johnston et al.1991〕、胸腺の縮小 〔Majumder et al. 987〕、リンパ球の機能不全〔Fraser et al.1980〕が起こることで、易感染症になって、多くの病気に罹患しやすくなります。

モルモットビタミンC欠病

モルモット用ペレットにはビタミンCが添加されていますが、保管状態によっては劣化しやすいです。ビタミンCの補給源として野菜や果物、あるいはビタミンCのサプリメントを与えるなどの策がとられています。果物は嗜好性がよいのですが、偏食や肥満、糖尿病の原因になるので、なるべく野菜でビタミンCの補給をしましょう。特殊加工された劣化しないビタミンCが添加されているモルモット用ペレットも開発されています。

モルモットのビタミンCの多い野菜の選び方はコチラ!

モルモットのビタミンCサプリメントの選び方とお薦め商品はコチラ!

その他のビタミンとミネラル

モルモットはカルシウムに関する疾病が多発します。しかしながら、カルシウムを初めとするミネラルのことがよく分かっていません。カルシウム(Ca)、リン(P)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)のバランスが重要とされ、様々な意見が展開されています。

モルモットのエサのカルシウムについてはコチラ!

モルモットのペレット

飲水

給水器も皿タイプとボトルタイプがありますが、多くがボトルタイプの給水器で飲んでくれます。モルモットはエサを口の中で長時間かけて水と混ぜ合わせて飲み込む習性があり、その状態で給水器に口をつけるため、給水器の水が汚れることが多いです。ボトルタイプの給水器であると、汚れた水が給水器の吸い口の先端のボールを詰まらせる原因になりますので注意して下さい。モルモットの飲水量は年齢やエサの内容などで変動しやすい特徴があり、飲水量は7.5mL〔Tsao et al.1989〕~21.7 mL/100 g体重/日〔Liu 1988〕と幅があります。

表:飲水量

飲水量(mL/体重100g/日)
7.5〔Tsao et al.1989
21.7〔Liu 1988


これがポイント!(エサ)

・主食は牧草
・餌からビタミンCをとる
・モルモット専用ペレットにはビタミンCが配合されている
・ビタミンCが多い野菜やビタミンCサプリメントを与える

ケア

モルモットが持つ野生本来の行動を発現できるような環境作りのために、環境エンリッチメントを考えます。「群れる」「隠れる」ことがポイントになり、いずれにせよ、モルモットはストレスに弱い動物で、群れて隠れることが本能的に備わっている。群れることは複数で飼育をするべきですが、単独で飼育をする場合は人がコミュニケーションをとるしかありません。

環境の変化を避ける

慣れていないモルモットでは、環境の変化や騒音は課題のストレスと感じます。

隠れるシュルター

隠れる空間はシェルター的な小屋やトンネルが提供されます。隠れる場所があるとモルモットは安心sます。

運動

人や環境に馴れた個体は活発あるいは好奇心旺盛な性格になり、動き回ることのできる広い空間も提供しましょう。具体的には部屋を探索させる、屋外でサークルで囲って遊ばせるなどを行って下さい。好奇心旺盛な動物で、興味をもつと積極的に周囲を探索するようになります。人に馴れてくるとスキンシップを求めてくることもあります。

モルモット

コミュニケーション

馴らすには、優しく声をかけながら、両手でそっと抱きあげて、コミニケーションをとってください。ケージの扉を開ける音に反応してモルモットが出てくるようにもなります。そして、嫌がったり逃げたりせずに触らせてくれるようになったら、膝の上にのせて優しくなでてみましょう。

好物の餌を手渡しで与えることなどもよいでしょう。モルモットは餌をねだり、声をだして催促するようになります。

ブラッシング

長毛種ではブラッシングが必要となることもあり、いずれもストレスにならないように行ってあげて下さい。

爪切り

野生では爪を削る環境がありますが、飼育下では爪が伸びすぎることがあります。おとなしい性格であれば定期的に切ってあげましょう。

モルモット爪

これがポイント!(エサ)
・馴れてくると以外に動く
・臆病なので少しづつ馴らす
・人とコミュニケーションをとれる
・長毛種はブラッシングをする

参考文献
■Cheeke PR.Nutrition of guinea pigs.In Rabbit Feeding and Nutrition.Cheeke PR ed.Academic Press.Orland.FL.p344-353.1987
■DIRECTIVE 2010/63/EU OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 22 September 2010 on the protection of animals used for scientific purposes(科学的な目的のために使用される動物の保護に関する2010年9月22日の欧州議会及び理事会指令2010/63/EU(抄) (EUの実験動物保護指令)
■Fraser RC,Pavlovic S,Kurahara CG,Murata A,Peterson NS,Taylor KB,Feigen GA.The effect of variations in vitamin C intake on the cellular immune response of guinea pigs.Am.J.Clin.Nutr33.839–847.1980
■Guide for the Care and Use of laboratory Animal.U.S.Department of health,Education and Welfare.Public Health Service.NIH.1985
■Green MD.Hawkins J,Omaye S.Effect of scurvy on reserpine induced hypothermia in the guinea pig.Life Sci27.111–116.1980
■Henning SJ,Hird.FJR.Concentrations and metabolism of volatile fatty acids in the fermentative organs of two species of kangaroo and guinea pig.Br.J.Nutr24.145–155.1970
■Howe PR,Wesson LG,Boyle PE,WolbachSB.Low calcium rickets in the guinea pig.Proc.Soc.Exp.Biol.Med45.298–301.1940
■Johnston CS,Huang S.Effect of ascorbic acid nutriture on blood histamine and neutrophil chemotaxis in guinea pigs.J. Nutr121.126–131.1991
■Kaiser S,Kruger C,Sachser N.The guinea pig.In The UFAW Handbook on the Care:Managment of Laboratory Animals 6th ed. Poole TB ed.Longman Scientific Technical.UK.p380-398.1986
■Liu CT.Energy balance and growth rate of outbred and inbred male guinea pigs.Am J Vet Res49.1752–1756.1988
■Lister D,McCance RA.The effect of two diets on the growth,reproduction and ultimate size of guinea pigs.Br J Nutr19.311–319.1965
■Majumder MSI,Rahim. ATM.Cell-mediated immune response of scorbutic guinea pigs.Nutr.Res7.611–616.1987
■Nutrient Requirements of the Guinea Pig.Nutrient Requirements of Laboratory Animals.Fourth Revised Edition.The National Academies Press.Washington DC.1995
■Rivers JM,Krook L,Cormier A.Biochemical and histological study of guinea pig fetal and uterine tissue in ascorbic acid deficiency.J.Nutr100.217–227.1970
■Shelton DC.Feeding the guinea pig.Lab. Anim7.84–87.1971
■Sergeev IN,Arkhapchev YP,Spirichev  VB.Ascorbic acid effects of vitamin D hormone metabolism and binding in guinea pigs.J.Nutr120.1185–1190.1990
■Tsao CS,Young M.Effect of dietary ascorbic acid on levels of serum mineral nutrients in guinea pigs.Int.J.Vitam.Nutr.Res59.72–76.1989
■Udenfriend S.Formation of hydroxyproline in collagen.Science 152.1335–1340.1966
■田嶋嘉雄編.実験動物学.総論.朝倉書店.東京.1970

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