専門獣医師が解説する水ガメの食欲不振・・・病気なの?どうしたらよい?
食欲がない理由は以下のどれか!
水ガメは意外とデリケートです。水温、光、水の汚れなどの環境の変化でエサを食べなくなります。メスだと発情が原因になることもあります。もちろん病気が原因であるかもしれませんが、まずはもう一度飼育環境を見直して下さい。ペットの爬虫類の拒食という問題は、昔ら大きく取り上げられ、原因が見つからないことも多々あります。エサを食べないで痩せてきたカメでは見た目で分かりにくいので、体重を測定するとよいでしょう。
- 水温が低い/冬眠
- 環境の変化などのストレス
- エサの変更
- 日光不足
- 水の汚れ
- 発情/卵
- 病気
水温が低い/冬眠
カメをはじめとする爬虫類は外気温動物なので、外気温によって体温が影響されます。外気温動物は自ら体温を上げたり下げたりできないため、日光浴/甲羅干しや水温の変化の影響を受けてます。水温が低くなるとカメの代謝が低下して、食欲もなくなりますので、水温管理はとても大切です。食欲がない時は、まずは水温を確認して下さい。水ガメの適した水温(至適環境温度域:POTZ)は種類などで異なるので一概には言えませんが、おおよそ25~30°Cくらいです(ホットスポットは30~35°C、水場は25°C)。気温差が激しい春や秋、梅雨などでは水温が20°C以下になることもあり、水ガメにとって比較的食欲が落ちる時期とも言えます。
冬に外気温が下がると当然のように食欲が落ち、冬眠する種類だと同時に体が冬眠する準備に入ります。保温器具を使っていても、水温が夏のような適温を保つのは難しくなり、15°C以下になると冬眠します。冬眠中は体の代謝を最小限にするので、餌を食べなくても体力は維持されます。しかし、冬眠前に胃腸の中の餌を空にするなどの冬眠の準備をしていないと、冬眠中に死亡します。飼い主は冬眠に対する知識が必要になります。最も問題となるのは冬眠するような冷たい水温でなく、水温が15~20°C位だと水ガメにとっての一番負担のある温度域です。この温度域は、冬眠するには水温が暖かすぎるし、活動やエサを食べるには冷たすぎるので、単に体力を消耗する状態となります。
対応
陸場の温度と水場の水温を、それぞれ温度計ならびに水温計を使って測定して下さい。適温よりも下がっているようであれば、爬虫類用赤外線ライト(バスキングライト)で陸場を照射し、水中ヒーターを使って水を暖める必要があります。ライトやヒーターが故障、コンセントやスイッチの入れ忘れなどが原因だったということがないようにしましょう。
低体温(半冬眠)という状態になると、水ガメは餌を食べなくなります。反対に猛暑など気温が高い日が続いている時も、食欲は低下しますので、ヒーターを切り、水槽を直射日光の当たらない風通しの良い場所に移動するなどして下さい。移動ができない場合は、エアコンなど飼育部屋を涼しくし、風通しをよくするような対策を練りましょう。冬眠させるのか、させないのか飼い主としてきちんと決断して下さい。飼育下で冬眠させるのは実際には簡単でなく、死んでしまうリスクもあります。健康に飼育するためには冬眠が必ずしも必要というわけではありません。年中暖かな環境(POTZでの飼育)で、カメにとって安全で快適な生活をさせるか、リスクを承知で冬眠をさせるかの選択になります。冬眠を成功させるには、カメの条件と飼い主の知識が必要になります。
環境の変化などのストレス
水ガメは環境が一変するストレスでエサを食べなくなることがあります。特にニホンイシガメやクサガメは神経質で、一方アカミミガメなどは環境が変わっても問題が起こらない性格です。最も多いのはショップから家に迎えたばかりの幼体にかかるストレスです。環境の変化のストレスは大人のカメにも起こりますが、カメの性格にも個体差があるので、全く新しい環境でも餌を食べる場合もあります。これは爬虫類の飼育で一番初めに苦労する難関かもしれません。環境がガラッと変わりますので、警戒して拒食してもおかしくありません。
対応
自宅に連れ帰った直後であれば、まずは数日間様子を見て下さい。水槽やケージに布などで落ち着くまで覆ったり、むやみに触ったり、覗き込まないなど、とにかくストレスとなることはしないようにしましょう。環境に馴れていないということは、エサを与える飼い主にも警戒しています。馴れるまでの時間(日数)には個体差があり、健康体ならば7~10日以内でエサを食べてくれるはずです。もしそれ以降も食べないようなら他の原因も探しましょう。2週間以上食べない場合は動物病院で診察を受けて、病気の有無を確認してもらって下さい。環境が変わってストレスがかかり、病気が発病した可能性もあります。特に水ガメは臆病なので、餌を食べるまで、1ヵ月以上も要したカメもいますので、その判断は難しいです。
餌の変更
水ガメの性格により、餌の好き嫌いもあります。生涯同じ餌で問題ない場合もあれば、同じものだと飽きることもあります。同じカメ専用のペレットでも、メーカーや種類などで違いが出てきます。また、水ガメはお気に入りの餌を好んで食べる傾向がありますが、与えすぎて反対に食べなくなってしまうこともあります。
対応
まずは給餌する餌の種類を変えてみて下さい。いつも与えていたものでなく、大好物のおやつ的(副食のメニュー)なものでもよいので与えてみましょう。もしくは与えたことのないものを試すのも一方法です。ペレットも1種類ではなく、嗜好性のよいペレットを2~3種類与えておくことこのような時に対応が楽ですね。カメ専用のペレットを主食にし、副菜として野菜、昆虫類や肉、小魚など、飼育しているカメの種類に合わせ、ローテーションを組んで与えると飽きがこないので、そして、奥の手として以下の方法も試してみて下さい。
食欲不振の水ガメに与えてみる価値がある餌
基本的に主食をペレットにしていると思いますが、もしペレットをあまり食べない時は以下の策を
とってみて下さい。まずはペレットのメーカーを変えてみましょう。それでも食べない時は意外かもしれませんが、生き餌を食べることが多いです。基本的に水ガメは雑食なので何でも食べますが、好きな生き餌は、ミミズ、ワーム類、ザリガニ、小魚、エビ類、オタマジャクシなどです。しかし、カメの性格によって全く生き餌を食べないこともあります。アカミミガメは性格がワイルドなので、生き餌にも怖がらずに食べることが多いですが、イシガメやクサガメは生き餌を怖がって食べてくれないことがあります。生き餌を扱うことに抵抗がある方は、人用に販売されている、生肉や魚などでもよいかもしれません。
日光不足
日光不足も水ガメの食欲がなくなる原因になります。室内でライトを使って赤外線や紫外線を照射している飼育方法がほとんどだと思いますが、それらのライトが適した製品でないような飼い主の知識不足もあります。爬虫類用赤外線ライト(バスキングライト)は保温効果があり、水ガメの体温をあげます。紫外線ライトのUV-Aは食欲を増進させる効果、UV-Bには体内でビタミンD3合成をし、カルシウムを吸収させる効果があります。どちらか一つしか使っていないようなケースもあります。しかし自然の太陽光に勝るものはありません。
対応
適切なライトで照射しているか確認して下さい。カメの体や水槽の大きさに対してライトのパワーが小さいと、暗くて温度も低くなり、紫外線ライトではワット数が低いと健康に問題がでてきます。しかし、薄明薄暮であるようなドロガメやニオイガメなどでは、明るすぎるのも良くないです。
水の汚れ
水槽内が汚れていたり、飼育水が汚れていると食欲不振になる場合が多くなります。もちろん水が汚れていることで感染症の原因にもなります。
対応
水ガメの飼育では必ず水場を設けますが、その水がとても汚れやすいので、毎日交換するか水中フィルターを付けてみるのもよいと思います。ただし、フィルターだけでは完全に汚れは取れないので、常に水が綺麗な状態なのか確認し、水交換も怠らずに清潔に保つようにして下さい。
発情
発情により卵巣に卵胞ができて、産卵前になるとたくさんの卵が胃腸を圧迫するので、性成熟をしたメスのカメは、餌を食べなくなることがあります。オスと一緒に飼育していなくても、爬虫類のメスは無精卵を毎年産みます。特に産卵前は神経質にもなり、食欲が落ちるケースがあり、他にも穴を掘るような仕草も見られるようになります。イシガメ、クサガメ、アカミミガメの繁殖期は晩春から夏の5~8月になりますので、この時期の成体のメスでは発情して卵を持っている可能性があります。交尾から産卵までの時期は、種類によっても異なりますが、およそ2~3ヵ月と言われています。これらの水ガメは卵を産める体になる成熟にはメスは5~10年を要しますが、野生と異なりペットでは、早いと3年くらいで発情を迎えます。
対応
卵胞や卵の確認を動物病院で行わないと判断できません。無事に産卵したら、その後に食欲が戻りますが、卵の殻にカルシウムが動員するため、サプリメントとしてカルシウムを多めに与えるような策を練って下さい。そして、産卵できる環境として産卵床を設けます。水ガメの交尾は水中で行われますが、メスは産卵時には陸場に上がり、穴を掘って卵を産みます。産卵する陸場は広めのスペースが必要で、陸場と水場が混ざらないように、完全に仕切るようにした方がよいでしょう。産卵が近づいたメスは、陸場にいる時間が多くなり、後足で床を掘るような仕草が見られたら、カメが徘徊して土を掘らせるような別ケージや水槽が必要かもしれません(産卵床)。
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病気
上記の原因に当てはまらない、もしくは対応したけど改善しない場合は、なにか重大な病気の可能性もあります。水ガメは普段から動作がゆったりとし、体の大部分が甲羅に覆われているため、病気の鑑別が難しいです。
対応
気づいた時には手遅れだったということがないよう普段から健康管理はしっかり行い、異常があれば動物病院で診察を受けて下さい。
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